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強烈で、気が狂いそうになるほどまぶしくて鮮やかな青い海だ。
辺りには一切何もなくて、僕は360度、どこまでも続く艶めかしい海に囲まれている。
空は恐ろしいくらいのピンク色で、海との境界がくっきりとしていて、塗り潰されたみたいに雲も星もない。
やがて羊が飛んでくる。ピンク色の空に、電飾でぎらぎらと飾られた金色の羊が跳ねながら飛んでくる。空と海の境界から。始めは塵みたいに小さく、近づくにつれて次第に大きく。そして僕の高い真上をぴょんぴょんと飛び跳ね通り過ぎていく。何匹も何匹も。
僕は海面に仰向けに寝そべってそれを数える。何匹も何匹も。
羊が一匹、羊が二匹……
これが眠りの前兆なんだ。
羊が一匹、羊が二匹……
どうやらもうすでに前兆はやってきていたみたい。
羊が一匹、羊が二匹……
僕はもうすぐ眠りにつくだろう。
羊が一匹、羊が二匹……
飛び跳ねる羊達と共に、僕はもう夢の世界に落ちるだろう。
羊が一匹、羊が二匹……
遠くで聞き覚えのある警報が鳴り響いている。これはもう夢の一部、どうやらあの時の夢みたいだ。
羊が一匹、羊が二匹……
思い出すのも嫌な過去。警報が段々大きくなっていく。僕は思わず耳を塞いでしまいたくなる。
羊が一匹、羊が二匹……
科学者として平和に過ごしていた時代が終わり、星を出たあとのあの忌まわしい記憶。
羊が一匹、羊が二匹……
夢から溶けだして暴力的に膨れ上がっていく警報が、辺りの景色と混ざり合っていく。
羊が一匹、羊が二匹……
空と海が、溶けだした夢に侵食され始めた。
そして僕は眠りに落ちる……
艦内の狭い通路 大勢の走る人達
民間人は直ちに脱出してください
鳴り響く警報は激しく
逃げ惑う人達は波みたいに押し寄せる
そんな中 僕は立ち尽くしている 人の波に揉みくちゃにされながら
通路の丸い窓から僕は外を見ている
広がる宇宙空間 その果てしない闇を切り裂いて 遠くで炎が上がっている
燃えているのは隣を飛んでいた第五艦 地平線みたいに大きな船体 その至る所から炎が上がっている
きっと僕のいる船も 同じように燃えているのだろう
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