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扉を抜けると、其処は石畳の路地裏であった。
コツリと革靴の音が響く。
辺りに人の気配は無い。
どうやら、吉良の創った扉は成功したようだ。
路地の方から喧騒が聞こえる。
良く耳を側立てると、驚いた事に届いてくる言語は“日本語”であった。
否、吉良には日本語に“聞こえた”。
よく聴くと…聞いた覚えの無い言語であると解る。
(トリップ特典“翻訳機能”付き…か?)
路地を覗くと“ヒト”の営みが伺えた。
“ヒト”だった。
少なくとも見た目は。
別に羽が生えたり角が生えたり尻尾や獣耳が生えたり等はなかった。
髪や目の色も金や茶色、青や緑と西洋系の色彩が多かったが、吉良と同様に黒を持つ人もいた。
コレならば、目立つ事無く人に紛れ込めれる。
強いて言うならば、其の身に纏う“白衣とスーツ”が異彩を放っている。
しかし、吉良は服装を変える気は無かった。
此れは一つの拘りだった。
そして“誓い”だった。
必ず元の世界に帰り、養護教諭に戻る。
それまで、この服装を止めるつもりはない。
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