0.御先祖様

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蝉がやかましいほどの大合唱で、飽きもせず今年も俺の耳をつんざいている。 こんなにうるさかったら、ただでさえ短い蝉の寿命が更に短くなるんじゃないかと心配してみるが…まあ無意味だろう。 そんな中、一人木々に囲まれた山の中腹にある自宅で、呑気に打ち水をしていた。 俺は暁光龍斗、高校1年。成績、友人関係の両方がそこそこと、大して特徴が無い人間性が特徴である。 既に夏休みは終盤。特にすることもない俺は、中盤のうちに宿題を終わらせているが、クラスメイトは皆がん首揃えて 「宿題終わってねえから無理だな~…」 「レポート?何それ…」 などと愚痴っているらしい。彼らにとって計画という存在はなんなのか気になるが…まあ、そのためもあってか暇だ。 父母は慰安旅行と言ってアメリカに渡米、姉は海外留学で台湾の方に赴いていて、かれこれ2年は帰ってきていない。 …しっかし、ちょっと出かけてくるって言った日からもう数年経ってるな、あの二人… 家にはゲームなんて洒落た物は置いていない。貧乏にそんな金銭の余裕はないのだ。 あまりにも暇なので、この広大な庭の草むしりでもしようかとも思ったが、地球の悲鳴である温暖化の影響で死にかけるくらい厳しい天候だ。いくら帽子を被ったとしても熱中症になりかねない。ちなみに現在気温35度(日陰)。地球さん、大変だなぁ… 仕方ないので、庭でへばっている犬、むさしのためにも気温を下げるため、日陰で水を飲みつつ汗を流しながらも、それを庭先に撒く。
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