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しばらくすると、坂下にある門口の方から、白い無地のTシャツを来た男が、自転車を押し歩いてきた。
やがてその男は、陽気な笑顔を振りまきながら手を挙げた。
「こんちゃ~♪元気か?」
「見ての通りっすよ…誠二さん兄来なかったら、暇すぎて脳みそ固まっちましたって…」
「ぷっ、ドンマイ」
「シャレになんないっすよ…」
嫌みったらしく笑う彼は、佐々木誠二、18歳。性格はユーモア溢れるが、時には相談などは真剣に聞いてくれる優しい人だ。
近所の小学校からの付き合いでは唯一の先輩であり、そして兄弟のような仲でもある。パソコンなどない俺に、世間の最新情報を彼が教えに来てくれるのだ。
「ところで、今日はどういった情報で?」
「あぁ、ビッグニュースだぜ!早速これを見てくれ」
おもむろにポケットから小さく折り畳んだ紙を出し、勢い良くバッと広げた。
紙にはロボットのような姿をしながら、顔は少女であるという、一風変わった光景が描かれていた。
「これは…?」
おずおずと聞くと、彼は得意気に言った。
「あぁ、これが最近巷で流行りの『武装神姫』ってやつだ!」
「…武装神姫」
姿はロボット。
近代的なデザイン。
そして普段ですらあまり起こり得ない女子と生活するというコンセプト。
どこをどう考えても、一向に馴染めそうにない雰囲気に、俺は早くもそれを拒絶したくなってしまった。
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