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「で、エリオン。お前はどうしてあんな所に居たんだ? 家族とかはどうした」
食事が一段落した所で、おもむろにストーマが聞いた。親方も静かに聞く態勢に入る。
「……わからないんです 何も。
自分の名前や年はわかるんですけど、それ以外はどうしても」
「俗に言う記憶喪失って奴か~。
ちと厄介だな。 俺が見つけるより前に何処にいたのかも分かんねえか?」
「はい……すみません」
エリオンは困惑と不安が入り混じった顔で所在なさげに頷いた。
「いや、失っちまったモンは仕方ねえよ。これから思い出していきゃいいさ。
――それよりお前、これからどうするつもりだ。 何も覚えてねえんだったら頼れる伝手も無いんだろ?」
「そうですね。 街の訓練所に行ってギルド見習いとして生活しようかとも考えていました。幸い体は丈夫なので。」
「それならよ、お前 此処に残らねえか? 今俺らは一応鍛冶で生活してんだが、俺はそれ以外に宅配やギルドに依頼するまでもない下級モンスターの討伐もやっててな。その手伝いをしてほしい。武術の基礎なら教えてやれるしな」
「いえ、でも そこまでして頂く訳には…」
「良いって。大丈夫だよな?親方」
「ああ、エリオンがしっかりうちの手伝いをするというならば考えるぞ。このまま放り出すのも忍びないしな」
「――では、しばらくお世話になります。宜しくお願いします」
「あぁ、宜しくな。エリオン」
その横で親方も静かに頷く。
太陽が力強く街を照らし始めていた。
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