一章 -追憶の日々-

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トン、トン、トン。 軽快な音を立てて急な階段を上がる。 相当年季が入ったこの木の階段は長年の上り下りによってワックスもかくやという程滑り易くなっているので、徹夜明けの頭には中々危ないものがあった。 背中に少年を乗せているのだから尚更である。 そんな中でもストーマは長年の経験(転落)と記憶(痛み)によって培われた感覚のお陰で無事に階段を登りきり、そのまま自室へと滑り込んだ。 「おーい、お前 起きてっか?」 数秒の沈黙。 どうやらまだ目覚めていない様子の少年を自分のベッドへと静かに寝かせると、物がないと自認する自室の数少ない家具である木の揺り椅子へと座り込み すぐに眠りへと落ちていった。
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