一章 -追憶の日々-

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カンッ カンッ カンッ さっき親方がストーマを殴った時よりもかなり軽い音が一階に響き渡っている。 二人が住んでいる建物は街の大通りに面する側が工場で、その奥に二階へと繋がる階段とそのまま奥の生活空間へと繋がる曲がりくねった通路がある。 つまり部屋同士の仕切りが殆ど存在しないので、二階の部屋にこもらない限り声や音は筒抜けなのだ。 ストーマが階段を降りて奥の居間へと向かうと、そこには昨日の少年が椅子に座って静かに待っていた。 「大丈夫か?お前。何が有ったのかは知んねえが」 「……いえ、大丈夫です。 助けて下さって有り難う御座いました」 「お前、名前は?」 「――エリオンといいます」 「やっぱお前なんか落ち着いてんなぁ ちなみに年は?」 「10歳です」 「その年にしちゃ落ち着いてんなぁ、 お前。 もっと無邪気なモンじゃねえの?10歳って。それぞれだろけどな。 まぁ取りあえずは飯だ。 親方~ 仕事切り上げて朝飯にしようぜ」 工場の音に負けないよう大声で叫ぶ。 「おう、待っとけ」 金属音が中断し、親方が大きく叫び返してきた。 「んじゃ、続きは食いながら話すか」 「分かりました」
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