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「長谷雄よ、おまえはまったく、なんという奴なのだ」
鬼が何かを言っているが、もう長谷雄にはそれが届かない。
「長谷雄よ、長谷雄よ………」
鬼の声が遠くなっていく。
干時高天早暁
繁漏頻移
燐秋夜之可燐
諺清景之可諺
長谷雄は、いつの間にか素足のまま庭に降り、月光の中で詩句を呟いている。
もう、鬼の姿はない。
更及盃無算
令叙事大綱
臣不勝恩酌之重
已為酔郷之人
恐対明月之輝
以述暗酌之緒云邇
長谷雄は、ただ虚しくその口からきらびやかな詩句を月光の中にこぼれ落とすのみであった。
了
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