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- 篁物語 -
小野篁(おののたかむら)
嵯峨天皇の頃から仁明天皇の頃にかけて宮廷にいた人物で、官人であった。
菅原道真(すがわらのみちざね)、紀長谷雄(きのはせお)より時代を遡った文人である。
その文才は、その時代では並ぶものなしと言われていた。
肌の色は白く、眉目秀麗だが、無口でまったく笑うことはなかった。
必要なこと以外はまったく口にしない。
他人から見たら、この世のものなど興味ないように見えた。
だから、一つの欠点といえば人付き合いである。
だが、付き合いは悪くても誰も篁の悪口をいう者はいなかった。
なぜなら、篁は褒められてもそれを自慢したりはしなかった。
ただ、淡く微笑する。
それが、宮中の者が好もしく思い惹かれていった。
そんな彼には奇妙な噂があった。
『身は朝廷に仕え、魂は冥途に通ぜり』と──。
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