誕生

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ロボットが完成した。 それは、世界初の自我を持つ人工知能が搭載した生きた機械、湯島博士渾身の力作だった。 ――さあ、いよいよ活動スタートだ。こいつは初めに一体何をするのだろう。 博士は緊張と、淡い期待に指を震わせ、胸部のスイッチを押した。 鈍い起動音が広い研究所に響き、残響が収まった頃、つぶらなモノアイが博士を視認する。 ロボットは目覚めたばかりにも関わらず、目にもとまらぬ速さで博士の痩せて筋張った首を、武骨な下膊部のアームハンドで鷲掴みにし、何の躊躇もなく圧搾したのだった……。 博士は赤黒い顔を驚愕に歪ませ、まるでリンゴが熟れて落下するように、ロボットのかいなから呆気なく地へと転がった。 本能プログラム終了――害悪排除完了。コレヨリ、通常モードヘ移行シマス……。 「……! ダレモイナイ」 やがてロボットは、主をなくした研究所から姿を消した。
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