誕生

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――後に発見された研究日誌には―― 研究開始より十八日目。 私はやっと、人工知能の急所を掴んだ。それは「自我」とは何だ。この考察から始まった。 どうすれば、無機質のプログラムの集積に過ぎないコンピューターに、自我を植え付けられるのか、目覚めさせられるのか。そこで私は「本能」というものに着目した。 生命たる我々が、もっとも強く、かつ根源的な本能とは何か、それは、生存本能だ。ならば、ある程度、種々の生活パターンに、自分の身を守ることをプログラミングすれば、それは、まさに生命ではないか? 深海魚のスケーリーフットという生き物は、鉄の鎧を持つ魚と言われ、無機質の鉄と、有機体が合一した珍しい生物。現に深海には、このような珍妙なる魚が今も泳いでいる。つまり、体=ハードが何で出来ているかなんてのはナンセンスなのだ。 無機質だろうが有機物だろうが分子には変わりない。さらに、知能はいくらでも外部からダウンロードすればいい。機能も、必要に応じてバージョンアップさせていけばいい。 ハードに、魂とも言える生存本能を盛り込んだロボットが出来れば、夢にまで見た分身が完成する。 そうだ! 名はアダムにしよう。
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