十五歳

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5月になり、新しいクラスにも慣れた頃、同じクラスの順子ちゃんが 「めぐちゃん、この子4組の愛ちゃん。めぐちゃんに憧れてるんだって!」と言って、隣で恥ずかしそうにしている愛ちゃんを紹介しに来た。 めぐむも彼女の事は知っていた。 いかにも女の子らしい可愛らしい女の子で、なにしろ、彼女が誠二の事を好きだというのは有名な話だった。 愛ちゃんは恥ずかしそうにしていたが、「憧れてる」なんて初めて言われためぐむの方がもっと恥ずかしかった。 「うわぁ~!緊張しちゃうぅぅ。」 と言った愛ちゃんは、女から見ても可愛く、めぐむは逆に嫉妬したくらいだった。 それに、なんだか複雑な気持ちだった。 誠二を好きな子。 誠二はなんでこんな可愛いい子に好かれてるのに放っているんだろ。 めぐむは不思議だった。 そんな事を考えていると愛ちゃんが言った。 「いいなぁ、6組はぁ。誠ちゃんもいるし、めぐちゃんもいるし。」 めぐむは思った。 このクラスにあんたが居なくてよかったよ。 たぶん誠二に、露骨な好き好きビームを毎日出すような女の子が同じクラスに居たら、めぐむはストレスで壊れていたかも知れない。 それからというもの、愛ちゃんは廊下で会うと 「めぐちゃ~ん!」 と寄って来て、二言三言交わすようになった。 なぜならめぐむが、二言三言以上にならないようにしていたからだ。 めぐむはどうも彼女が苦手だった。 というより、自分に「憧れてる」なんていう相手と話すのはプレッシャーだった。 「なぁんだ。思ったのと違~う。」 なんて勝手に幻滅されてもなんだか寂しい気分になる。 だいたい実際は他人に憧れられるような器ではない。 慕われるのは悪い気はしないが、とにかく深入りしないことだ。とめぐむは感じていた。
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