十五歳

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めぐむは井ノ原の事で今でもよく覚えている事がある。 小学四年生の時、体育館で「トムソーヤ」の実写版映画の鑑賞会があった。 トムとハックルベリーが、二人に正体を知られた泥棒のしつこい追ってを逃れ、泥棒の裏をかいて負かすシーンで、井ノ原が大きな声で歓声をあげたのだ。 低学年くらいの子なら、思わず歓声をあげたりもするかも知れない。 だが四年生にもなると、みな恥じらいを覚え、感情を出さずに静かに見ているものだ。 他の生徒は井ノ原の歓声に引いていたが、その時のあまりに嬉しそうな井ノ原の声があまりに印象的で、めぐむはいつまでも覚えていた。 井ノ原は素直で優しい少年に違いなかった。
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