十五歳

10/102
前へ
/272ページ
次へ
そんな頃、めぐむの父親は胃ガンを発病し、胃の全てを摘出する手術をする事になった。 めぐむの父親は、普段は明るく優しいが、夫婦ゲンカが絶えず、それこそ星一徹のように食卓をひっくり返したり、母親に暴力を振るう事が度々あった。 一度は家に灯油をまいて火を放とうとしたくらいだ。 まだ小学生だっためぐむが泣いてすがり、止めたのだ。 母親はそんな時、オイオイと泣くばかりの女だった。 だからこそ、めぐむ達には父親が「母親をいじめる悪者」に感じられた。 事実はいまだにわからない。 父親が何が不満だったのか。 小さい頃は恐怖のあまり泣いたりもしていたが、小学校高学年になると、恐怖は無くなり、怒りすら湧いていた。 めぐむには9歳離れた姉が居たが、そんな父親に嫌気がさし、すでに家を出て一人暮らしをしていた。 めぐむには二歳上の兄も居て、めぐむは兄よりも先に、泣く事をやめていた。 ケンカが始まると2階に避難し、二人で遊んだ。 階下の事を忘れようとするかのように、父親の怒鳴り声が聞こえないように、二人で楽しく遊んだ。 あの時ほどお互いの存在が有り難かった時はないだろう。
/272ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加