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母親は一度、めぐむが五年生の時に、「離婚する」と言った。
もちろんめぐむ達を連れて。
兄もめぐむも、反対はしなかった。
不安はあったし、友達と別れるのは嫌だったが、これ以上家の中が良くなるようには思えなかったし、ビクビクと過ごす事も、泣いてばかりの母親を見るのも、もう終わりにしたかった。
しかし母親は別れなかった。
なぜかと尋ねると「せめてお前達が高校に入るまでは」と言った。
めぐむは幼くて分からなかった。
「私達の存在がお母さんの自由を奪っているって言うのか」と感じた。
「お母さんは外で働いた事も無いし、何の資格も持ってないから一人で生きていけないだけで、だから別れないくせに、私達のせいにしないでよ」
と。
父親が入院している間、家の中は明るかった。
多分誰一人、心の底から彼を心配している者はいなかった。
6月だった。
…衣更えの日の、誠二の白いシャツ姿は、久しぶりで眩しく、めぐむは目を細めた…。
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