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大きな石があった。
その横には看板が立て掛けてあり、「お間抜け様。触るべからず」と書かれていた。
男は、無性に触りたくて触りたくて堪らなくなり、その大きな石に手を触れてみた――
――すると、男は大きな石になっていた。
目は見えなかったが、自分の前に人がいることが分かる。当然声も出ないし動けなかった。
「いやぁ、助かった助かった。ありがとうございますお間抜け様。百年振りに人様に戻れた」
待ってくれ! 待ってくれぇええ!
しかし、当然石になった男の声は届くはずもなく、虚しく人影は去っていった。
……やがて、何も考えられなくなっていく自分に気付くことさえ出来なくなった。
END
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