あなたに会いたくて…

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「まだ貸し出し中……」 今日で五日目。 視線の先には漸く見付けた……でもずっと空のままの一枚のDVDケース。 同時に私は、この時間いつもカウンターにいる筈の人の姿を探していた。 「それ。昨日借りられちゃったんですよ。他所には滅多に置いて無いみたいで」 不意に背後からかかる低い声に肩が震える。 振り向くとそこには、探していた彼の姿があった。 「あ。そ、そうなんですか」 「本当言うと、借りたのは俺なんだ。そうすれば、ほら。また一週間お客さんに会えると思ったから……」 上擦った声で答えれば、唐突に彼の唇から零れ出た声音に私の心臓は大きく跳ね上がる。 「でもごめん。延滞しても良いかな? もっとお客さんに会いたいから……」 少し照れたように鼻の頭を掻きながら、苦笑混じりに彼は言う。 熱く火照った自分の顔を隠すように俯いた私は声にならない返事に代えて、一度、首を小さく縦に振ってみせた。
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