ヒロの休日 二日目

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花彩る庭園に吹く、心地好い風が髪を撫でる。 「……ふぅ」 その風の中、 少女に手伝って貰いベンチに腰掛けた俺。 『大丈夫? 楽になった?』 その横で俺の具合を心配する少女。 『ばぅ~』 そして、その足元でくつろぐペロ。 「あぁ、だいぶ楽になったよ。 手伝ってくれてサンキューな」 ……実を言うと足元のペロが怖かったりする。 『うん、どういたしまして。 そういえば出川さんは何で、この庭園にいるの?』 「ん~なんつーか、追われてる」 『追われてる?誰に?』 「ん~、鬼だな」 『……鬼?』 「おうよ、むっちゃ足の速い鬼」 『鬼ごっこしてるの? それで庭園に逃げてきた?』 「まぁ、そういうことだな」 『なるほど~ じゃあ、捕まる訳にはいかないよね!』 そう言って、少女は立ち上がり両手で俺の手を引く。 「え、ちょ!」 『だって追われてるんでしょ? 絶対、屋敷の中の方が安全だよ!』 「でも勝手に俺なんか屋敷に上げて大丈夫なん?」 『大丈夫、お父様と母様は本館だし、 お手伝いさんもいるけど、私の部屋なら大丈夫!』 「いや……う~ん」 行くことすら禁止されてる別館の中に入る、ってのは……どうなんだ? 『ね?』 「んー」 ……まぁ、綾美に捕まんないなら別にいっか。 「うん、わかった」 『きまりね! ペロも行こう!』 『ばう!』 かくして、俺は少女 ついでにペロと共に別館へと向かった。
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