ヒロの休日 二日目

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そんでもって、場所は別館の玄関ホール。 「この、降ろせっ、 自分で歩くっつの!」 『なりません。 そう油断させておき降ろした瞬間、逃げだしかねませんから』 「ぬ……ぐぅ」 俺は綾美の小脇に抱えられ、本館へと強制送還される事になった。 『それに貴方のお父上もお帰りになるそうです』 「……そうかいそうかい、わーったよ、 さっさと連れてけ」 そうして玄関を通り抜けようとした時、 『出川さっ、じゃなくて。 えっと……お兄ちゃん!』 呼び声と共に由佳理が駆けてくる。 「おい、綾美ストップストップ、 頼む、少しだけだから!」 俺を抱える綾美の背中をパシパシ叩き立ち止まらせる。 『……1分だけならば』 「わかった 」 そして立ち止まった俺達に由佳理が追い付く。 『もう……帰っちゃうの?』 そう言いながら、由佳里は少し名残惜しそうな表情を浮かべる。 「まぁ……うん。 わるいな、全然遊べなくってさ」 『ううん、そんなことないよ、 少しの間だったけど楽しいかった。 その……私、お屋敷の外になかなか出してもらえなくて……お友達とかいなくて。 いつも、つまらなかった。 でも……今日は、お兄ちゃんと遊べて楽しかった! 本当に楽しかったから、また遊ぼう!』 「おうよ、また遊ぼうぜ!」 『……時間です』 言葉と共に綾美が扉を開けホールを出て本館へと歩く、 屋敷の方を見ると由佳理が小さな手を目一杯振って見せていた。
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