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……乗る前から由佳里の態度は明らかのおかしかったし、
今思えばジェットコースターに乗るべきじゃなかった。
今更だが、そんな考えが頭を過ぎる。
……しかし、時すでに遅し。
ランプのカウントダウンは後一つ、今更降りる事はできるはずもない。
この由佳里の怯え様、
このまま発進したら……もしかしたら由佳里は泣いちまうんじゃないだろうか。
……
……そういや、
……昔、最後に屋敷に別れを言いに行った時も泣いてたっけ。
……
……それは、ちょっと、何か……嫌だ。
何故だがわからないが、
幼い日の由佳理の涙を思い出すと胸が苦しくなった。
「由佳里」
『……うぅ』
「大丈夫だ」
『……?』
俺を見る由佳里の瞳は涙で既に潤んでいる。
「……大丈夫、兄ちゃんが手握っててやる」
そう言って俺は震える由佳里の手を握る。
「……な?」
『……うん』
‐ピッ‐
瞬間、最後のランプが点灯した。
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