メロンパンとカプリスその2

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「あの、まさか馬鹿にしているんですか?」 『由佳里、俺は知ってるんだぜ?』 「何を?」 『由佳里が毎日、 一生懸命頑張って料理を作ってるって』 「な、何言ってるんですか、 いい加減にしてください!」 ……失敗はしないよう心掛けてはいるけれど、 私は別に、一生懸命になんて作ってるつもりはない。 『由佳里は味見も怠らねぇ、 この前、一緒に料理作ってよーくわかった』 そんな当然のこと…… 『だから、肉ジャガの味が甘くなりすぎることなんてありえないんだ』 甘い…… 一瞬、我が耳を疑った。 そんなはずは、と 半信半疑に自分の作った肉ジャガを口にする 「……」 料理としては体裁を保ってはいる、 けれど……甘い 兄さんの言う通り味見をしなかった訳じゃない、 味見はした、確かにしたはず。 味見をしたのに、私は甘くなり過ぎたのに気づかなかった。 「……こんなミスをするなんて」 料理に疎い兄さんが気づくほどの甘さだというのに。 そんな私を見て兄さんはに口を開き静かに言った。 『由佳里はミスなんてしない……たぶんだけど。 よほどの事がなけりゃしやしない。 だからさ、 その由佳里がミスをするて事はよほどの事てのがあったってことなんじゃないか?』 「……はぁ」 諦めと共に思わずため息が出る。 「まさか兄さんに嘘を見通されるなんて」 『これでも兄貴だしな、一応』 「……そうですね」 ……本当にそうだ、 十年近くの時が過ぎ、昔とは変わってしまったかと思っていたのに兄さんは全く変わっていない。 「……」 ……昔は嘘をついてもすぐに見破られてたなぁ。 ふと、そんな事を思い出す。 「わかりました、 お話しましょう」 ばれるはずもないだろうと思っていたはずの嘘も見破られ、 ……十年近くの時が経っても、兄さんは私のお兄ちゃんのままなんだな。 そう、思いしらされたのでした。
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