メロンパンとカプリスその3

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そんなこんなで登校中。 主にウチの学校の生徒は通学路に大通りを使うのだが、 それに対し俺や由佳里が使う通学路は大通りから一本ずれた住宅街を通る、 こちらの通学路は大通りにくらべ曲がり角が多く時間がかかるのだが、車も人通も少ない。 あまり今日は時間に余裕は無いんだが、 今日のように重要そうな話をするには、いつもどおり住宅街の方が都合が良いのである。 「んで、話のほうだけど」 『えぇ、あまり兄さんには関わりのない話だとは思うのですが』 「……関係ないかもしんねぇけどさ。 一人で抱えこむよりは誰かに話したほうがいいと思うぜ」 何気なく俺がそんなことを言うと由佳里は突然立ち止まり、 『……』 じっ、と俺の顔を見つめる。 「……な、なんだ」 何か変だったんだろうか 『……』 「……」 無言で俺を見つめ続ける由佳里。 「……ぬ」 こう、由佳里の透き通った瞳に見つめられると、 ……なんだか落ち着かねぇ。 『いえ、なんでもないです。 ……いきましょう、兄さん』 しばらくすると由佳里はそう言い、 再び歩きだす。 「おう」 ……なんかしらんけどドキドキしたぞ。 『兄さんの言う通りですよね。』 どこか自信なさげに由佳里は言う。 「おうよ、俺の言うとおりだぜ」 とりあえず自信満々に答えてみる。 『そうですよね』 その後、よく聞き取れなかったのだが、 『……もう一人で頑張らなくてもいいよね」 何か確信めいたように由佳里は小さく呟くのだった。
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