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「ごちそうさん。
んじゃ行ってくるわ」
と、リビングを出て玄関に向かうと
『兄さん』
由佳里に呼び止められる。
「あ?」
『はい、どうぞ』
「……これは?」
由佳里から青色の布に包まれた小さな包みを渡される。
『お弁当です。
どうせ兄さんはコンビニ弁当や学食ばかりなんでしょう?』
「……ちなみに中身はBanana?」
ーゴスー
『不正解』
Bananaと言う英単語一つで鉄拳制裁という圧政。
……はてさて、由佳里が来てからというものの俺の脳細胞は一体いくつ死んだのだろうか
……ただでさえ頭が悪いのに。
「まぁ、サンキューな由佳里」
……でもまぁ、弁当はぶっちゃけ嬉しい。
『つ、ついでです、私の分のついでですから』
「あ?あぁ、すまねぇな」
『ほら、早く行って下さい遅刻しますよ!』
「へいへい」
由佳里に急かされ靴に履き替える。
『行ってらっしゃい、兄さん』
「おう、いってくら~」
……考えてみりゃ、誰かに見送られるなんて久しぶりだな。
ーガチャー
「……今日は温かいな」
ようやく春らしくなった風に吹かれながら
ふと、そんなふうに思った。
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