妹とは大変な役回りです。

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…… 3月某日、 今日は天気も良く風の柔らかな気持ちの良い日。 そんな日は庭園のベンチで本でも読みながら過ごしたいものだ、と。 ……ふと、窓の外の庭園を横目にそう思う。 『本当良いのだな、由香里よ』 その声に視線を前に私は戻した。 声の主、黒塗りの長机を挟んだ椅子に腰かける立派な髭を生やしてらっしゃる老人、 この方は村瀬一族の元当主こと、村瀬 信國(むらせ のぶくに)。 「はい、従兄様は従兄とは言え、わたくしの兄ですから」 ……今回、祖父様の招集に従い私は村瀬邸に来ています。 『お前の進学先の事もある。 監視ならば、お前でなくとも結花を送ってもよい』 「いえ、そのことは構いません。 監視のためにわざわざ姉様をお送りにならなくとも私で事足りるかと」 その招集の理由…… それは兄さんの監視についてです。
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