消えゆくおもひで

5/15
前へ
/136ページ
次へ
《僕》は必死になって頭の中を見てみた。 思い出せ!!思い出すんだ。 《僕》自身なのか、それとも誰かなのかはわからないけど何かが《僕》にそう言ってる気がした。 でも――からっぽだ。 《僕》は気がついた。 「どうしたの?お兄ちゃん。頭……痛いの?」 女の子が《僕》に話しかけてくる。そもそもこの子は誰? 「お兄ちゃん、たまには家に――」 「君は誰なの?」 僕は女の子の話を遮るようにして彼女に話しかけた。 彼女は首を傾げるような仕草をした。そして僕にこう言った。 「お兄ちゃん。忘れたの?私よ。もしかして――」 女の子はそう言うと僕の元から離れて、白衣の服を着た人のところへ行った。 「……はい、そうですか。頭を特に打っていたのですか、それで――はい。ありがとうございました」 彼女と男の人の声は周りの雑音でよく聞こえなかったけど、一部だけ聞くと僕は頭を強く打っているらしい。 それにしても何なんだ。この状況は。
/136ページ

最初のコメントを投稿しよう!

67人が本棚に入れています
本棚に追加