19人が本棚に入れています
本棚に追加
.
傷付けて。
壊そうとして。
その度にお前はお前が俺に与えた傷を癒し、踏み止まった。
毎夜寝入った俺の胸に手を当て、鼓動を確かめて。
穏やかな顔をした。
………知ってたか?
ちゃんとお前には在るんだよ。
繋ぎ留めたくて(傷付けて)。
奪われたくなくて(壊そうとして)。
けれど大切にしようともしてくれたじゃないか。
何で気が付かない。
お前はからっぽじゃない。
虚無なんかじゃない。
心(ソレ)を知りたいと、欲しいと焦がれたお前にはもう既に在るんだ。
………だから俺は繋ぎ留められた、ここに。
お前の傍に。
「ずっと一緒にいよう………?」
《死神》が……かつての俺の同士と上司である彼等が、ここに近づいているらしい。
近い内に大きな戦闘が在る。
………どちらも無傷とはいかないだろう。
きっと犠牲が出る。
そのせいか表面上はわからないが、ウルは落ち着かない。
この部屋にいる間は、片時も俺から離れようとしなくなった。
………わかっているんだ。
彼は賢いから。
戦いによってもたらされる犠牲の中に、自分か入る可能性も在ること。
そうして、俺が奪われること。
それを恐れてる。
本人は自覚していないけど。
―――だから時間はあまり無い。
「………当然だ。」
「もう、お前は“あちら”には戻れない。お前は既に」
「―――《闇(ワレラ)》の同胞だ。」
………だからそんな言葉で縛らなくて、脅さなくていいのに。
「あぁ…、ウルと、おんなじだ……。」
だから離れないよ、ずっと。
……そう、約束する。
残された時間は少ない。
いつ終わる永遠(ズット)かもわからない。
それでも、お前も望んでくれるのなら。
そうありたいと願うよ。
「……暁、あの歌の終わりは何だ。」
俺の胸に手を当て、その鼓動を聞くウルの顔は酷く穏やかだ。
………はかなくて、やさしげですらある。
―――あの鳥もこんな気持ちだったのかな?
.
最初のコメントを投稿しよう!