日誌1 世界で一番辛いのは「維持」すること

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「未来を創り守り抜くのは、老人や私のような成人ではなく今を生きる子供たちだ!」 「………君の言い分には一利あるな…ネゴシエイター……」 アリス軍事学校の仮校舎の一室で男2人…いや、3人がソファーに腰をかけて、その3人のうちの2人が言い争いを続けていたが、終わりが告げられたようだ。 2人の男たちを見つめながら焦る女の子…ではなく男の子がオロオロと聞いていた。 少し肥えた中年の男がアタッシュケースを机の上に上げて、開きたくない重たい唇を無理やりこじ開けた。 中年の男「私の負けだよ…さすが国一番のネゴシエイター…《ナイチンゲール》の名は伊達じゃないな…」 赤髪の黒のサングラスをかけ、黒いスーツを身に付けた男がタバコをケースと愛用の銀色のライターを取り出した。 「他人の古傷を弄るのは他人に憎まれますよ?私にはクレア…クレア・スカーレッドというちゃんとした…(ジャキ!)……名前が……(ジャキジャキ!)……ライター火つかなッ!?」 クレア・スカーレッド 24歳。ネゴシエイター(交渉人)の職に就きながらもアリス軍事学校の生徒もしている。 クレアはマッチ箱を取り出したがマッチ箱の異様な軽さに気づき、元にあったポケットの中へ戻し、火のついていないタバコを灰皿で潰した。 クレア「約束通り、予定金額の10倍の額で頂きますよ?我がアリス軍事学校を取り壊そうとし我が校に傷を付けたら普通、賠償金も頂くのは当たり前でしょう?」 中年の男「………承知したよネゴシエイター」 中年の男は肩を下ろし、重たいため息を落とす。 クレア「交渉成立♪…ですね?クロナ先生?」 「えッ!?あっ…ハイ!!ありがとうございます!!」 肩身を小さくし、水色の長髪をなびかせながら話を聞いていたクロナ先生はビクッとして答え、頭を下げた。 中年の男「なぜ国一番のネゴシエイターがこんな学校の味方をする?」 クレア「この学校はこの国を守る義務がある。あと私はこの学校に借りもあるので…」 クレアはサングラスをとり、左目の傷を中年の男に見せつけた。 男は威圧に圧(お)され、部屋を後にした…
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