第1話

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「離せ!!」 強気な態度で反抗してみるものの体は一向に動かない。 王子はそんな朱希菜に笑いながら声をかけた。 それは冷たい声で。 「離さないよ。僕の朱希菜。先ずは逃げたお仕置きだね。これは、規矩に任せるよ。」 「はい。」 途端に悪寒が走る。 命令された規矩はそんな朱希菜に構うことなく、朱希菜に股がった。 そしてそのまま、腹に思い切り拳を打ちおとした。 「カハッ…」 動く事の出来ない朱希菜は容易にくらう事になる。 規矩の攻撃は止むことはなく、朱希菜は殴る蹴るの暴行を全身に受けた。 「ゲホッ…ウッ…ゲホゲホッ…カハッ…」 顔にも腹にも、逃げないように足にも。 治癒が追い付かないほどボロボロにされた。 「もう良い。…朱希菜、これで懲りたかな?」 そこまでされてようやく、王子は規矩を止め朱希菜に問いかけた。 「……ハァハァッ…」 朱希菜は肩で息をしながらも、そんな王子を睨み付けたまま言葉を発しなかった。 「規矩。下がって良い。」 そんな朱希菜に規矩を下がらせた王子は、朱希菜の横に腰かける。 「朱希菜。」 「触、る…な。」 頬を撫でながら、王子は朱希菜に呼び掛けるも、朱希菜が発したのは完璧な拒絶だった。 先程までにこやかに笑っていた王子も無表情へと変わり、冷たい冷たい声で朱希菜に話しかける。 「朱希菜。兄がどうなっても良いのか?」 ビクッ 兄という単語に反応を見せた朱希菜に王子は満足そうに笑うと、朱希菜に顔を近づけた。 (卑怯だ…) 反らす事も出来ないまま、王子から深いキスを与えられる。 (気持ち悪い。反抗したら…雪夜が…。くそっ。) 王子はゆっくりと朱希菜から離れると、二人の間を銀色の糸が繋いでいた。 「今日はこのぐらいにしといてあげるよ。」 王子はそう言うと、朱希菜の拘束も解かずに部屋を出ていった。
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