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「え、何で?」
「昨日まで闇契国に居たことは雪夜の話で聞いてるからな。髪色を変えるだけでも相手には気づかれにくい。ましてや、双子の兄がいるんだ。紫に染めればそこらの奴らよりもバレないだろう。」
当然ながら疑問に思う勧めに朱希菜だけでなく、雪夜も耳を傾けた。
確かに紅緋の言うことも一理ある。
(でもバレたら、雪夜はどうなるんだ?同じ顔だし、分からなかったら二人一緒に連れていかれる可能性だってある。)
そう朱希菜が思ってしまうのも仕方ない事である。
朱希菜は動きづらい事を理由に胸をベストで潰している。
その状態で髪を染め、雪夜と同じ格好をすれば、完璧に男の子に見える前に雪夜になるのだ。
そうすれば、自ずと雪夜を危険に晒すことになってしまう。
朱希菜にとって、それは一番避けたい事なのだ。
「折角だけど、髪は染めない。その変わり、格好を男の子っぽくしてみる。雪夜と同じ格好じゃないけど。それじゃダメか?」
朱希菜の申し出に紅緋は笑った。
「それが朱希菜の選択なら止めないよ。服は此方で用意してやるから。」
その返答に朱希菜は安心したように笑うと「ありがとうございます。」と頭を下げた。
「かたっ苦しいのはなしだ。朱希菜。お前を雪夜の特攻隊副隊長に命じる。しっかり雪夜をサポートしろよ。一応軍隊は与えてあるが、雪夜はすぐ自分で突っ込むからな。」
紅緋はそう言って笑った。
雪夜もまた笑っていた。
朱希菜はその空間が今まで生きてきた中で初めて心地良いと感じた。
絶対に壊したくないと。
守りたいと。
そう思った。
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