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井本は部活動を終えて自転車置場に向かうと見慣れた人影を見付けた。更に近付くと足音に気付いたのか顔が上がりはっきりと誰なのか認識出来てきた。
先程、散々サッカー部中からからかわれていたのを井本は思い出し眉間に皺を寄せ人影を睨み付けた。
「井本っ!」
「…んやねん、そないおっきい声出さんでも聞こえとるわ…」
頬が緩んでいるのがバレていないだろうか?とどぎまぎしながら井本は自転車のカゴに薄い鞄と練習着の入った袋を入れた。
その間、藤原はイチミリも動かずただ井本の行動を静かに視線で追うだけだった。
コイツに気の利いた台詞が言えるとも思っとらんから俺から言ったらなあかんやろな…とチラッと横目で見上げる。
とりあえずお前の言いたい事から聞いたるわとゆう風に会話を促す。そんな井本の仕種にハッとして、藤原は一つ深呼吸をした。
「あ、あんな…明日遊び行かへんか?」
「…ま、合格にしといたるか…」
自分の呟きに首を傾げる藤原を見て井本は、自転車はよ漕げや!と背中を叩いて笑った。
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