事の起こり

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「おっ、オレ金持ってません! 手持ちはみんな愛川ななみのCDに使い果たしましたからっ!」 「……」 「……」 「……はあ?」 お兄さんは怪訝そうにオレを見下ろす。 「ああ、キミ……アイドルオタク?」 「違います!ただのファンであってオタクじゃありません!」 なぜかオレはこれでもかと言うほど力強く訴えた。 「ふぅん……まあいいや。これあげる。」 「へ?」 手に握らせられたのはキラキラしたセロハンに包まれた飴3つと少しシワになったメモだった。 「うちの会社の新製品。なんか疲れてるみたいだったから。 これ食ったら元気になるよ。 気に入ったらここに電話して? じゃあ」 「えっ、あ、ありがとうございます!」 (なんだ、怖い人じゃなかった) バイトを週にいくつか始めたばかりだったオレは、 見知らぬ他人の気遣いがなんだかすごく嬉しくて、それらをポケットにそっとしまった。
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