優美な君へ

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名を呼ぶ声に、君が振り向く。艶やかな黒髪が煌めき、端正な顔立ちに柔らかな笑顔が映えている。 優美な手を翳し、「おいで」と優しい声で囁く君は、目映い程に綺麗だった。 そっと歩み寄り、まるで壊れ物に触れるかのように抱き締めると、君は腕を回して抱き返してくれた。 ふわり、と甘い香りが鼻をくすぐる。安心にも似た温もりを感じ、一筋の涙が頬を伝った。 ――君の温かな腕の中にいる時、僕は至福の安らぎを感じられるんだ。 心の中で、漠然と呟いた。 傍らで揺れる黒髪に、いつしか心が踊っていた。
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