バレンタインデー

2/2
前へ
/13ページ
次へ
『茶色くて甘い物が貰えません』 そう書いた紙を段ボールに張り付けて、教室の前に設置してみた。 普段から『バレンタインってあれだろ、お菓子会社が売り上げを伸ばす為だけにやってるんだろ。そんな社会の策略に乗る奴等の気が知れんな。フッ』等と言って、チョコいらないアピールをしまくってる俺が犯人だとは、よもや誰も気付くまい! 密かに誰かがチョコを入れている事を期待しながらほくそ笑んでいると、ふっと頭上に影が差した。 「あれ置いたの、お前だろ」 降りかかる声に顔をあげれば、そこには無表情のヤツの顔。 「なっ何故バレたぁああ!?」 驚きのあまり大声をあげると、迷惑そうに片眉を潜められる。 「アレか、お前は超能力者かエスパーか!?それとも宇宙人か!?」 「宇宙人より不可思議なのはお前の思考回路だ」 思わずまくし立てると、無表情のままそう返された。 放課後段ボールの中を見てみると、『もっと頭を使え』という手紙と、チロルチョコがたった一つだけ入っていた。 おそらく送り主はヤツだろう。 なんとも言えない悲しさを感じながら口に放り込んだチョコは、やはり涙の味がした。 せめて甘酸っぱい青春の味が良かったと思った。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加