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“夢が欲しいんだ”
そんな言葉を口にしたのは、いつ頃だっただろうか。
学生の頃。笑っていた頃。訳もなく希望が湧き続けていた、そんな嘗て。
あれから友は皆夢を持って、広大な世界に羽ばたいて行った。
瞳に、輝きを称えながら。
――それなのに俺は今、死んだ魚のような目で溶けるような藍色を見続けていた。
立ち込めている、紺碧の霧。
ここでは空が地面で、地上はごちゃごちゃとしたヴィジョンで。先の見えない道で迷った鳥達は、“ 空”に堕ちて命を落とす。
下を向けば、遥か遠くに地面が見えた。
「もう、終わりにしよう」
暗い声が口から告いでた。諦め、辛さ、哀しみ。様々な感情の滲んだ声。恐らく俺の、人生最後の言葉になるだろう。
別れを惜しむように、ゆっくりと、紺碧の世界を閉ざして行く。
後に残った物は、暗闇だった。
空に堕ちるんだ。俺。
腕を広げ、俺は『とんだ』――。
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