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「交替だ」
交替を待つ門番に声がかかる。
振り向く門番の前に同じ制服を着た男が立っている。
しかしそれはサングラスをかけた見ず知らずの男だった。
「誰だお前?」
「金で雇われた用心棒の一人だよ」
「確かに用心棒を雇っているという噂は聞いた事があるが…?」
不審げな目で目の前の男を眺める。
しかし男は蟻一匹通さない厳重なセキュリティで囲われた邸宅の敷地内から来ている。
出入りを許されている者でしかありえなかった。
「お前達じゃ敵が来た時に何の役にもたたねぇから俺が代わりに来たんだよ。今日は戦いのプロが立つ日だ…今日なんだろう?予告のあった日付は」
「まぁ、な…しかし」
「何だ?」
俺だって射撃とキックボクシングとサンボ位は出来るんだぜ。
思わず出そうになった言葉を飲み込んだ。
仲間内で揉める事にメリットは無い。
代わりに違う情報を提示した。
「もう終わっている」
チラリと庭師の行った方向に目をやりながら門番は答えた。
微かな沈黙。
「…ここだけの話だがな」
「…」
「まだ始まっちゃいないんだよ」
「どういう意味だ?」
門番が浅く腰を落とす。
「勘違いするな。ガセネタを掴まされたんだよ俺達は。怪盗とやらの情報操作だ」
「この家系の情報網を相手に、たかが泥棒風情が出来るものか」
「仕方なかろう。事実は事実だ。何ならお前のボスに聞いてみろ」
「俺みたいな下っ端が口をきける訳ないだろう」
つい言い方に刺が出る。
不安なのだと自覚していた。
だがそれが何処から来るのかわからない。
怪盗の目星はついていた。
警察関係者に予告状を鑑識させたのだ。
相手は経験歴1年程の庭師だった。
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