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湊は私の向かい側に腰掛けると、咳払いを一つし話し始めた。
湊「もう学校生活は慣れた?」
由廼「うん。友達もいるし、なにかと充実してる」
そっか。と湊は微笑み、ゆっくり立ち上がると窓の外を眺めながら、どこか遠いもの見るような目でまた話し始めた。
湊「…由羽(ユハネ)さんが亡くなって、九年と少し経ったんだね」
由廼「…うん」
由羽(ユハネ)さんは、私のお母さんで私が六歳になる年の春、事故で他界。お父さんとは、その少し前に既に亀裂が入っていたらしく、お母さんが亡くなった直後に離婚したという。
湊「由廼ちゃん。君に用事というのは言うまでもなく、なぜ君を歳を偽らせてまで、この学園に入学させたのか。それを話そうと思ってね」
そうだ。実は私は、高校一年生ではない。今年で15歳の中学三年生だ。
由廼「今まで聞いても教えてくれなかったのに。どうして急に?」
湊「…だって言ったら入学してくれなかっただろうし。もう潮時かなと思ってね」
由廼「………嫌な予感する。今からでも辞めていいかな、学校」
湊「だ、だめだよぉおお!由廼ちゃんしか頼れる子いないんだからぁ!」
ガクガクと勢いよく肩を揺すられ、視界もグラグラと揺れる。
由廼「ちょ、分かったから!!!」
すると湊は待ってましたと言わんばかりに、ニヤリと笑い向かいのソファーに座り直した。
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