競馬場へ行こう

　すると既に席は取られ
ていた。
　席には小太りの男が鼻くそほじくりながら座っている。
　和美は肩を落とし、落胆する。
「席…獲られちまった…」
　今日はダービーとあって、府中競馬場は立錐の余地もないほど数多の人々でごったがえし殷賑さに沸いている。
　そんな殷賑さに沸く競馬場の館外を、パドックの北側目指し、和美とさゆりは歩みを進める。
「おぅ千佳!フジビュー戻るぜ」
「あっ、オッケーい」
　３人はパドックを後にし館内に入っていく……。
　フジビュースタンドの5階Ｂ指定席に、３人は到着する。
　１番前の席まで階段を下りていく。
　全席２人がけ禁煙席である。
　さゆりと千佳が同じ席
にふたりで腰を降ろす。
　和美は隣の席に座る。
　和美はあくびをしながら、席に設置されているモニター画面を眺めている。
　千佳が満面の笑みを浮かべながら言った。
　このＢ指定席は、直線の攻防が堪能できる席でもある。