Rule1.夕焼け、金色の向こう側

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     わたしを男性恐怖症だと勘違いしている千明先輩の質問に「あぁ」とか「うう」とか答えていたら、とんでもない質問にぶち当たってしまった。  目の前にいる(部屋の隅と隅だけど)憧れの人が『俺と恋愛しない?』って…… 「い、みが……」  喉の奥が張り付いたみたいに乾いてしまって、掠れ声で尋ねるわたしを遮ったのは、千明先輩。 「っても、本当の恋愛じゃないというか……練習っつーか。なんというか……」  眉を寄せたり離したり、唇を噛んだり。  しばらく顔中で複雑な心境を表していたけれど、パッと顔を輝かせて、 「そう、リハビリ! お互いに恋愛できるようになる、リハビリ。陽菜ちゃんも、俺なら大丈夫みたいだし、二人で恋愛できるように頑張ってみない?」  俺、すっごくいいこと言ったでしょ? 褒めて!  という顔をしていた。  先輩は、わたしを男性恐怖症で恋愛ができない子だと思っている。  先輩も、たぶん何か理由があって恋愛ができない。 「あの……わたし……っ」  言わなきゃ、今。本当は違うんですって。  嘘ついててごめんなさいって。  白い壁にもたれた彼の顔は優しげに笑っているのに。 「俺の、リハビリ彼女になってくんない?」  瞳に宿るのが、深い悲しみの色じゃなかったなら……きっと本当のことが言えた。  ――なんて。 「いいですよ、千明先輩」  そんなの、ただの言い訳。     (Rule1.夕焼け、金色の向こう側)    
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