Rule2. 太陽に、うそをつく

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     膝の上に置かれたソナタ。  本当は、これだけで満足だったのに。 「契約成立だ」  太陽のような笑顔を振りまくこの人の、奥で眠る月を知りたくなってしまった。  小さなレッスン室の端と端で成立した、わたし達の契約。  すくっと立ち上がった千明先輩は、直線上のわたしを見つめて。  きゅっと上げた口角が、柔らかく動いた。 「……そっちに、行っていい?」  グレーのカーペットの上で、黒いブーツがわたしの返事を待っている。 「ど、どうぞ……」  その言葉を聞いてから、やっと歩き出す足。  とは言っても、千明先輩の大きな歩幅ではたった二歩で部屋の真ん中、透明な境界線が引かれた所まで辿り着いてしまった。  近くなった距離に、どきどきする。  もしかして、わたしも立ち上がった方がいいのかな。  そんなことを考えているうちに、スラリと伸びた体はまたしゃがみこんで、 「もっと近くてもいい?」  もう、どきどきなんて言葉では足りないくらいに跳ね上がる、心臓の音。  声が出せなくて、もげそうな勢いで首を縦に振ったら、先輩はふっと笑う。    
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