Rule2. 太陽に、うそをつく

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     小さく二歩ブーツが動いて、カーペットに膝をつけると、わたしと同じ高さまで目線を合わせた。  三角座りをしているわたしのつま先と、膝をついて少しだけ前のめりになる先輩との距離は、3センチ。 「陽菜ちゃんの嫌がることはしないし、やめたくなったらいつでも言って。そんで、どっちかが恋愛できるようになったら、それでおしまい」  わたしを安心させるためなのか、その声色はひどく優しい。  声だけじゃなくて、表情も、仕草も、全部。"男性恐怖症の"わたしのために、考えてくれているもの。  うそ、ついてるのに。  そんなに優しくされたら、もう戻れなくなる。 「わ、かりましたっ!」  やっとの思いでひねり出した言葉と同時に、またコクコク首を振るわたし。  それを見た先輩は、くすくす笑ってブレスで飾られた腕を伸ばした。 「シュシュが取れかかってる。首、振りすぎ」    髪の毛一本すら触れないように気を遣う先輩は、指先でシュシュを摘んで「はい」とわたしの膝に乗せた。  手なんてすごく大きくて、男の人の手ってこんなにごつごつしてるんだって、またどきどき。 「あ、ありがとうございます!」  そう言いながらもまた首を振っているところからして、もしかしたらこれってわたしの癖なのかもしれないと、新たな自分を発見したわけで。  くすくす笑いから、わんこな八重歯を見せる悪戯っ子の笑顔になった先輩には、 「なんか、陽菜ちゃんてあれだ。ひよこみたい。これから、ひよこちゃんって呼んじゃお」  『ひよこ』という、可愛いんだか可愛くないんだか、よくわらない称号をいただいてしまった。 「これからよろしくね、ひよこちゃん」  こうして、わたしと千明先輩との奇妙な関係が始まったのです。    
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