Rule2. 太陽に、うそをつく

5/16
前へ
/392ページ
次へ
    「あたしはね、陽菜がずっと千明くんだけ見てきたことも、頑張って勉強してたことだって知ってる。だけど……っていうか、だからこそ、近付き過ぎるとあんたが傷付くような気がすんの。『どちらかが恋愛できるようになるまで』って、お互いに、相手が誰かに惹かれていくのを見届けるってことでしょ。陽菜はそれでいいの?」  それは必然的に、千明先輩が誰かと恋をすることを見守るということ。 「それでも、いいよ。千明先輩が幸せなら、たぶんわたしも幸せだもん。傷付いたり、しない」  くるんと巻かれた毛先を整えて、最後にもう一度まつげの確認をした真希ちゃんは、パチンとミラーを閉じた。  メイクをして、大人びた服装をした真希ちゃんは、一ヶ月前まで高校生だったとは思えない。 「そう……。陽菜がそう言うなら、あたしは何も言わない。言ったってどうせ聞きやしないし。まぁ、頑張りな」  餞別だ、とでも言わんばかりに、残り数本のポッキーを全部わたしに押し付けると、スッと立ち上がる。  生足が眩しいよ真希ちゃん。ちょっとパンツ見えそうだし。 「じゃ、あたしこれから合コンだから。はい、帰った帰った」 「えっ、まだ『大学における千明先輩の人気の高さについて』の話が残ってるのにっ! 真希ちゃんっ……!?」 「ええい、うるさい。そんな話聞いても、あたしに男は回ってこない!」  優しいのか冷たいのか、わからない。でも、こういうあっけらかんとしたところ、好きなんだよなぁ……。    
/392ページ

最初のコメントを投稿しよう!

985人が本棚に入れています
本棚に追加