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「あたしはね、陽菜がずっと千明くんだけ見てきたことも、頑張って勉強してたことだって知ってる。だけど……っていうか、だからこそ、近付き過ぎるとあんたが傷付くような気がすんの。『どちらかが恋愛できるようになるまで』って、お互いに、相手が誰かに惹かれていくのを見届けるってことでしょ。陽菜はそれでいいの?」
それは必然的に、千明先輩が誰かと恋をすることを見守るということ。
「それでも、いいよ。千明先輩が幸せなら、たぶんわたしも幸せだもん。傷付いたり、しない」
くるんと巻かれた毛先を整えて、最後にもう一度まつげの確認をした真希ちゃんは、パチンとミラーを閉じた。
メイクをして、大人びた服装をした真希ちゃんは、一ヶ月前まで高校生だったとは思えない。
「そう……。陽菜がそう言うなら、あたしは何も言わない。言ったってどうせ聞きやしないし。まぁ、頑張りな」
餞別だ、とでも言わんばかりに、残り数本のポッキーを全部わたしに押し付けると、スッと立ち上がる。
生足が眩しいよ真希ちゃん。ちょっとパンツ見えそうだし。
「じゃ、あたしこれから合コンだから。はい、帰った帰った」
「えっ、まだ『大学における千明先輩の人気の高さについて』の話が残ってるのにっ! 真希ちゃんっ……!?」
「ええい、うるさい。そんな話聞いても、あたしに男は回ってこない!」
優しいのか冷たいのか、わからない。でも、こういうあっけらかんとしたところ、好きなんだよなぁ……。
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