Rule2. 太陽に、うそをつく

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     結局、真希ちゃんの家の扉は無情にもバタンと閉まり。ポッキーをかじりつつ、帰宅の途に着いたわたし。 「あら、陽菜ちゃん。お帰り。大学はどう?」  庭先で掃き掃除をしていたお向かいの田中のおばちゃんは、外門を開けたわたしの姿を見つけると、目尻に愛想のいいしわを浮かべた。 「ただいま戻りましたー。大学、楽しいです。今日は、すごくいいことがあったし!」 「そりゃあ、良かったねぇ。あ、少し前に恭ちゃんも帰ってきたよ。なんだか急に大人っぽくなっちゃったねぇ」 「そうですか? 中身はあんまり変わってないですよ」  その後も、取り留めのない言葉をいくつか交わして田中さんとの会話を終わらせ、家の中に足を踏み入れたわたしの目に飛び込んできたのは、乱雑に脱ぎ捨てられたスニーカー。  それから、脱衣所に向かう廊下に点々と脱ぎ捨てられているシャツと、靴下と、ズボンと……ぱんつ。  浴室のシャワー音が止まって、脱衣所の扉を開けて出てきたのは、 「陽菜、相変わらずマヌケな顔だな」 「恭ちゃん、歩きながら服脱いじゃだめって言ってるでしょ」  ひとつ違いの弟、恭平だった。  相変わらずマヌケな顔って例えが、なんとなく自分でも納得できるのが悲しいところ。 「時間の短縮だって。効率的でいいだろ」  拾い集めた衣類を押し付けると、下半身にバスタオルを巻いただけという格好の恭平は、不満そうな顔をしながらもそれを受け取る。色素の薄い亜麻色の髪の毛は濡れたままで、首筋を伝って剥き出しの裸体へと垂れ落ちていた。  よく『女顔』と言われる恭平は、丸っこくて穏やかな目をしていて、目の下にぷっくりとある膨らみや、スッと通った鼻筋に厚めの唇。下手すると……いや、完全にわたしよりも美人さん。  そういえば今まで深く考えたことはなかったけれど、性別的に言えば、恭平は"男"なんだよね。    
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