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限りなくヌードに近い恭平の身体を見ながら、千明先輩も脱いだらこんな感じなのかと思うわたしは、変態さんなんだろうか。
こんな風に肩幅が広くて、胸にも筋肉がついてて、お腹が硬そうな感じなの?
「な、なんだよ。じろじろ見てんじゃねーよ。犯すぞ」
「恭ちゃん、ちょっと手見せて」
はぁ? と間の抜けた声を出しながら、大きく広げた手のひらをこちらに向ける恭平。
差し出されたその手は、確かにわたしよりも大きいし、指も長くて骨張っているけれど……
「んんー、やっぱ違うや。全然違う。恭ちゃんは、『男のひと』じゃなくて『男の子』だ」
恭平と千明先輩を比べたのは、間違いだった。全然どきどきしない。
……弟なんだから、当たり前か。
「はぁっ!? てめーふざけんな! 陽菜っ、降りて来いこらぁっ!」
二階へ続く階段を昇りながら、下で叫ぶ声が聞こえたけれど、そのまま自室に滑り込んだ。
この時間にシャワー浴びてるってことは、恭平はこれから出かけるんだろうな。
きっと、遅くまで帰ってこない。お父さん……はいつものことだけど、お母さんも遅いのかな。
デスクチェアを引き寄せて腰を降ろすと、バッグから取り出したソナタを机の上に飾った。
先輩は、どうして恋愛できないんだろう。
何を、そんなに憂いているんだろう。
あの人の笑顔は太陽のようだけれど、その下に本音を隠している気がするのは、わたしの思い過ごしなの?
ソナタの後ろ。一番奥に飾られた、三年前の家族旅行写真。
まだ中学生だった恭平と、高校生になったばかりのわたしがこっちを見ていて……逃げるように写真を伏せた。
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