Rule3.絡まる、絡まる

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    「ねー、恭ちゃん。好きな子に彼氏がいたらどうする?」 「は……?」  わたしのおでこに軽くデコピンして、部屋から出て行こうとする恭平に尋ねたら、しばらく黙り込んでしまった。  ……もしかして地雷踏んだ? 聞いちゃいけない話題だったのかな。 「ごめんっ、やっぱいいや。今日のご飯何かな。みんなで食べるの、久しぶりだね」  部屋の入り口で、立ち止まったまま動かない恭平を追い越して、階段を下りる。リビングから漂う香ばしい匂いが、鼻をついた。  ドアの向こうで感じる、お母さんの気配。  ああ、本当に久しぶりだな。お父さんも……帰ってくればいいのに。 「陽菜」  静かに後を追う足音が、すぐ後ろまで迫る。  いつになく真面目な顔で、両手をスウェットのポケットに突っ込んだまま。 「俺は諦めない。つーか、そんなの関係ねー。好きな女に彼氏がいたら諦めろなんて法律、どこにもないし」 「恭ちゃん……」  もう随分前にわたしの背を追い抜いた、恭平の頭。  いつからか使うようになった、香水のにおい。  前髪を上げて隠すものがなくなった瞳は、強い意志を秘めていた。 「……そんなの関係ねーは、もっとリズミカルに言って欲しかったな」 「てめぇ、真面目に答えてやってんのに! ふざけんなブス!」  すぐに崩れたその表情は、いつものように大げさに眉を寄せ、ちょっと高い声で不満そうに悪態をついた。  ごめんね、恭平。  真面目に答えてくれたのはわかってるけど、こうやってごまかさないと泣いちゃいそうだったよ。  だって、わたしもそうだもん。  そう簡単に諦めたりなんて、できない。  ううん、違う。  片想いの終わらせ方が、わからない。  千明先輩。  先輩も、そうなんでしょう?  だから、わたしを側に置いたんじゃないんですか?    
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