1713人が本棚に入れています
本棚に追加
/283ページ
「……バカはアンタ」
自分でもわかるぐらいの低い声に、理玖が徐に振り返る。
勿論、紙袋で顔は見えないが。
ゆる巻きの子は、怪訝な顔を覗かせた。
「は?なんて?」
「バカは、アンタっつったの。
誰かもわかってないくせに」
彼女を睨みつけて言うと、理玖の頭に手を伸ばし、紙袋の端を掴んで思いっ切り引っ張った。
「……っわ!」
顔をバラされた途端、勢いよく地面にしゃがみ込んで、両腕で顔全体を覆う。
「バカ理玖、隠すな」
――パシン。
後頭部をはたいた時の、小気味よい音。
「……」
チラリ、と私を見る理玖は、少し困ったような表情をしていた。
最初のコメントを投稿しよう!