憑く光

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「なら、どうしてお前は妖怪なんだ?」  気が付いた時には、タクはそんな事を聞いていた。 「おかしな事を聞いて来る。私は妖怪だから妖怪なのだとしか答えようがないな」 「なら、なんで人間じゃないんだ?」  それを聞くと、妖怪は笑うのを止めて急に押し黙った。  どうしたのかと様子を伺っていると、妖怪は徐に話し出した。 「アヤカシ……」 「アヤカシ?」  復唱するようにタクは問い返した。 「そうアヤカシだ。私達は、アヤカシに憑かれている」 「憑かれるとどうなるんだ?」 「理から外れる事になる」  あまりに抽象的な応えに、タクは首を傾げた。 「どういう意味だ?」 「人でなくなるという事だ。獣や草木とは、また違う存在になる」  タクには、妖怪の言っている事が分からない。  なればと、タクは再び聞く。 「なら、アヤカシってなんだよ」  妖怪は膝を抱えるように体制を直して応えた。 「どこにでも居る奇妙な物の怪だ。形も無く漂い、流れる者達の事をアヤカシとよぶ」  ちょうど、と妖怪は顔を上げる。 「この松が、アヤカシに憑かれているな」 「え?」  タクも、妖怪と同じく仰いだ。  確かに、こんな風に人の入る空間を造るように根を張った木は見た事がない。  きっと昔、広く根を張ったこの松の根下から土砂が崩れて、そして松が成長するうちにこんな空間が出来たのではないか。そう村に住む者は皆納得した気になっていたが…… 「木に巣くうアヤカシが居るんだ。それは、その木に巣くう代わりに、木の成長を促す習性がある。この松のような樹齢が四百を越えるような大木は、大概そのアヤカシが憑いている」 「で、なんでこんなふうになったんだ?」  急かすようにタクは聞くと、鼻で笑いながら妖怪は応えた。 「この辺りは至る所に山の削れた跡がある。恐らくこの松の根下から大きく地面が崩れたのだろう。その時、倒れぬようにアヤカシがこの松の根の成長を促したのだ。ちょうど、崩れた地面に対してこの木が倒れぬように。この空間は、その結果生まれたのだろうな」
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