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「へぇー」
聞き入っていたタクは思わず声を上げてしまう。
村の大人の言っている事は、あながち間違いではなかった。
だが今まで、それを証明する根拠が、皆の口からは語られていなかったのだ。
改めてその真相を聞かされ、タクはなんだか世界が開けたような感覚を感じた。
胸の奥から、躍動と興奮が溢れて来る。
「なあ、もっと教えてくれよアヤカシの事」
身を乗り出してタクが言った。
妖怪も横目でタクを見ながら「落ち着け」と制して、目を正面に戻した。
「私もアヤカシに関してはそれ程詳しくない。なんせ数が豊富で各々に名前はないからな。それでも、まあ私が知っている範囲でなら雨が上がるまで話してやろう」
妖怪はそのままいろいろな事をタクに語った。
落ちる雨音を背に、花に住むアヤカシ、雨と一緒に降ってくるアヤカシ、人の使う道具に憑くアヤカシや、人の目に憑くアヤカシまで、いろいろな話をタクに話した。
中でもタクが一番面白いと思ったのは、川にいるアヤカシの話だ。
そのアヤカシは、川の流れと共に泳いで、川にある石のふやけた表面を食べるのだという。
流れが急な川に打ち上げられている石の表面が、やけに滑らかで丸いのはそのアヤカシに表面を食べられたなんだとか。
他にも妖怪は面白い話を次々と語った。
しかし、タクは話に夢中になっていたが、気が付けばにわか雨は通り過ぎてしまっていた。
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