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「さて……」
最終の話をし終え、妖怪は立ち上がった。
「あ、どこ行くんだよ!」
タクは籠を背負って根を飛び出した。
「もう雨も止んだ。話は終わりだ」
妖怪はそう言って根から出ようとした。
が、その出口をタクが塞ぐ。
「そんなん知らねえよ!もっと話聞かせてくれよ!」
「雨が止むまでと言ったろ……。私は日が暮れるまでにはこの山を越えたいんだ」
そう踵を返して妖怪は反対側から出ようとする。
が、タクはまたそちらの出口に立ちふさがった。
「なら家に来いよ。なんか食わせてやるし、一晩なら泊めてやるからさ!」
「断る。人里に留まるとロクな事がない」
妖怪は再び踵を返す。が、タクもそれを追う。
「家に来たらいいもん見せてやるからさ!」
「こんな山奥の集落に、大した物があるとは思えんがな」
妖怪のその言葉に頭を熱くしたタクは地団駄を踏みながら応えた。
「馬鹿にすんなよ!家には金剛石があるんだぞ!」
「金剛石?それは大したものだ。して、その金剛石とやらはどんな石なのだ」
「透き通ってて、虹色に輝くんだ! 独りでにな! 偽もんなんかじゃねえぞ!」
「独りでに輝く……?」
その時、妖怪の目の色が変わった。
「気が変わった。その石、見せてはくれぬか?」
「お、おう」
突然の気の変わりように、タクはたじろぐが、気を取り直して「その代わり話聞かせろよ!」と声を上げた。
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