憑く光

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「父ちゃん!」  タクは慌てて駆け寄ろうとするが、妖怪はタクの服の襟を掴み、「近付くな!」と一括した。  その激しい剣幕に、思わずタクは固まってしまう。  タクが固まっている内に、妖怪は横たわるキスケの脇に膝を降ろしてキスケを調べ始めた。  妖怪はまずキスケの首に指を当て、脈を計る。  その後キスケの口に耳を近付け、呼吸を確認した。 「……………………」  妖怪は顔を上げるとしばらくキスケを眺めたまま黙り込んでいた。 「……どうなんだよ」  沈黙をタクが破った。 「脈も呼吸も酷く浅い。それに、この身体……」  タクは、再びキスケの身体を見た。  すると、キスケは右手にあの金剛石を持っていた。  金剛石を持った右腕から背中に駆けて、キスケの身体はまるで金剛石のようになってしまっていた。  だが不思議な事に、キスケの金剛石を持った手だけは、キスケの手のままだった。 「私は医者ではない。だが、これだけは言える。この男は間違いなく死ぬ」 「え……?」  タクは、妖怪の言っている事が理解出来なかった。  尚も、妖怪は独り言のように続けた。 「おかしいとは思っていた。ここの山には、アヤカシが多く居すぎると。だが、こんな物が居たんだ。ようやく合点が行った」  妖怪は、そう言いながらキスケの手から金剛石を取り上げた。 「……まさか」  タクはハッとした。  頷きながら、妖怪は告げた。 「そう、こいつはアヤカシだ」
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