憑く光

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 キスケはそれ以上何も言わなかった。何も言えなかった。  目を開いたまま、キスケは完全に停止していた。  タクの瞳から涙が溢れ出す。  溢れる感情に、うなり声を上げ、拳を握り締めた。  悔やみきれない想いを胸にしながら、タクの脳裏にはずっと前のある日の出来事が映し出されていた。  削られた山肌。その前に、村の皆で合掌して祈りを捧げる。  タクは耐えきれず、涙を流していた。  その前日にも、ずっと涙を流し続けていた。  しかし流れども流れども、溢れる涙は枯れる事がなかった。  山の向こうにある町で雇った僧侶が経を読み終え、皆が帰り始めた頃、そんなタクの肩を優しく叩き、キスケが注意を引く。  タクが顔を上げる、そこにはキスケの笑顔があった。  誰より辛いはずなのに、キスケの表情には全く嘘はない。  キスケは笑顔のまま告げた。 「父ちゃん、お空に行っちまった母さんに約束したんだ。お前を絶対に、強い子に育てるって。だからタク。苦しくても、どんなに悲しくても、笑って生きて行こうな」  夏至の陽よりも明るく、強さを感じる笑顔。  しかしその笑顔さえも、冷たい悲しみの底へと消えて行ってしまった。
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